ベッドの真ん中に下ろされ毛布をかけられると藍里はその毛布を頭の上まで被って丸まり、声を押し殺して泣いた。

そんな藍里の傍で智大は暫く何かをしていたようだけど、やがて毛布の上からポンッと手を置いてきたので藍里はビクッと反応した。

「薬と飯と飲み物は置いておくから、食べれるなら食べろ」

「……いらない」

「いらなくても水は飲んでおけ」

何で智大はこんなに冷静でいられるのだろう、自分はこんなにもぐちゃぐちゃな気持ちなのに。と藍里は何故か悔しく思いながら、毛布を強く握った。

「スマホも近くに置いておくから、何かあったら連絡……」

「……しない」

「ん?」

「連絡なんてしない……何があってもしない……」

「……藍里」

初めて智大に向けたと言ってもいい藍里の反抗は、自分でも分かるくらいとても子供じみた物だった。
こんなことしか言えない藍里に智大が少し呆れたような声を出したので、藍里は起き上がると同時に被っていた毛布を投げた。

「放っといてよ!私、頑張ったのに……なのに……!」

「分かってる。藍里が頑張ってくれてたのは、ちゃんと分かってるから」

「分かってない!分かってないよ!」

首を何度も横に振り、智大の言葉全てを否定する。
困り果てたような顔をした智大がゆっくり手を伸ばしてきたのを見て、藍里は考える間もなく咄嗟にその手を払い除けた。