「藍里」

「ん……」

肩を抱き寄せられ触れるだけの短いキスをして離れると、藍里はじっと智大を見つめた。

「智君……約束した、よね……?家に帰ったら、たくさん甘やかしてくれるって……」

「お前も言ってたな、俺に甘えてほしいって」

頷いて擦り寄ると智大は藍里を横向きに抱きながら立ち上がった。
所謂お姫様抱っこで向かった先は寝室で、その場所の意味することを察した藍里は、驚きに目を丸くして真っ赤になった。

「と、智君?え……あの……っ」

「言ったよな、嫌だって言っても離せないって」

「い……言ってたけど、でも……!私、ただくっつきあうだけだと思って……っ!」

「そんなわけないだろ、俺が今までどれだけ我慢してたと思ってる。どろどろに甘やかしてやるから、覚悟しておけよ?ああ、あと……」

発作を起こさないように、ちゃんと息をしろよ?

耳元で囁かれた言葉と熱い吐息に、藍里はベッドに下ろされた瞬間に両手で顔を隠した。
その様子を見て智大は声を押し殺すように笑い、藍里の手に口付けた。

「観念しろ藍里、ストーカーから守った褒美を貰うぞ」

「う……うぅ……」

両手を離して智大を見上げると、そこには見たこともないほど優しい顔で微笑み見下ろしている智大がいた。
恥ずかしさや戸惑いは消えないけれど、智大なら……。と藍里は両手を智大へと伸ばしたのだった。