「智大に新居に遊びに行かせてって何度言っても毎回“忙しい”の一言で終わらされてね。智大って、そんなに忙しいのかな?」
「そう……ですね。定刻で帰れることはほぼないみたいですし、夜勤もよくあって……忙しそう、です」
「じゃあ、あの家には殆んどあいちゃん一人なんだ?」
「はい……」
歩いてきたマルを抱っこして毛並みや爪の伸び具合、毛玉や皮膚の状態を確認しながら圭介の質問に答えていく。
テンポ良く答えられている気がするのも腕の中にいる癒しの存在、マルのおかげだ。
「そっかそっか。それじゃあ遊びになんて行けないなぁ」
「ご、ごめんなさい……」
残念そうにしている圭介に本当なら、智大がいなくてもいつでも遊びに来てください。と、社交辞令でも言うものなのかもしれないが、男性恐怖症の藍里にはそんなことは恐ろしくて口には出せなかった。
それに、智大が駄目だと言っているのに勝手なことを言ったりしたら……。
「あいちゃん、大丈夫?」
心配そうな圭介の声に藍里はハッと我に返るとマルに触れていない自分の掌を見る。
小刻みに震えていたその手を見て、藍里は小さく深呼吸をすると気持ちを落ち着かせようとした。
「大丈夫です。ごめんなさい……」
「いや、あいちゃんは何も悪くないよ。えっと、じゃあ、マルを頼んでいいかな?」
「は、はい……可愛くカットさせていただきます」
昔から勘が鋭かった圭介はこれ以上藍里と話すのは無理だと察したようで、早々に話を終わらせるとすぐに立ち去っていった。
震えが止まるまでマルを抱きしめて、漸く動けるようになると藍里はゆっくりした足取りでトリミングルームへ向かった。
「そう……ですね。定刻で帰れることはほぼないみたいですし、夜勤もよくあって……忙しそう、です」
「じゃあ、あの家には殆んどあいちゃん一人なんだ?」
「はい……」
歩いてきたマルを抱っこして毛並みや爪の伸び具合、毛玉や皮膚の状態を確認しながら圭介の質問に答えていく。
テンポ良く答えられている気がするのも腕の中にいる癒しの存在、マルのおかげだ。
「そっかそっか。それじゃあ遊びになんて行けないなぁ」
「ご、ごめんなさい……」
残念そうにしている圭介に本当なら、智大がいなくてもいつでも遊びに来てください。と、社交辞令でも言うものなのかもしれないが、男性恐怖症の藍里にはそんなことは恐ろしくて口には出せなかった。
それに、智大が駄目だと言っているのに勝手なことを言ったりしたら……。
「あいちゃん、大丈夫?」
心配そうな圭介の声に藍里はハッと我に返るとマルに触れていない自分の掌を見る。
小刻みに震えていたその手を見て、藍里は小さく深呼吸をすると気持ちを落ち着かせようとした。
「大丈夫です。ごめんなさい……」
「いや、あいちゃんは何も悪くないよ。えっと、じゃあ、マルを頼んでいいかな?」
「は、はい……可愛くカットさせていただきます」
昔から勘が鋭かった圭介はこれ以上藍里と話すのは無理だと察したようで、早々に話を終わらせるとすぐに立ち去っていった。
震えが止まるまでマルを抱きしめて、漸く動けるようになると藍里はゆっくりした足取りでトリミングルームへ向かった。



