「……ご飯、少しだけ遅くなってもいい?」

「ん?」

「少しだけでいいの。少しだけでいいから……こうしてたい」

抱きしめられたり見つめられたりしたら、やっぱりドキドキする。
智大の匂いは相変わらず好きだし、触れていたら安心感すら覚える。
これが勘違いではないと、前のように戻りたくないと思いながら擦り寄ると、智大は腰を抱く手はそのままに頬に当てていた手を藍里の後頭部に回した。

「少しじゃなくていい。満足するまでこうしてろ」

「うん……」

「飯は後で一緒に作ればその分早く出来るだろ。だから心配しなくていい」

「うん……」

「藍里、好きだ」

「……私も……」

多分、好き。とは声に出せず、気持ちに自信がなくなった藍里は切ない気持ちを抱えたまま目を閉じて、智大の温もりを感じていた。
何かに不安そうにしている藍里の様子など見通しているかのような智大は、藍里が満足するまでの長い時間をずっと抱きしめていた。