すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「なんなのその男はっ！離婚よ離婚っ！別れちゃいなさいっ！！」

「先輩、落ち着いてください……茶々君が怯えてます」

千栄と会ったその日の内に智大に仕事は続けさせてほしいことを伝えようとしたけれど、朝言っていた通り帰ってくるのがかなり遅かった上に疲れているようだったのもあって……と言うよりも自分から話しかけるのが怖かったのだけれど、きちんと伝えられなかった。

辞めろと言っただろ。とか、まだ辞めてなかったのか。などとまた冷たく言い放たれるだろうか。
辞めずに黙って働いていることを知られたらどうなるのだろうか……。

職場は今の藍里にとって唯一の心癒される場所なのに、辞めさせられて、あの息が詰まる家にずっといなければならなくなったら……。

そんなことばかり考えていると気が重くなって体が思うように動かず、気付けば溜め息ばかり。
そんな藍里を怪訝に思った先輩に問い詰められ、かいつまんで理由を話せば怒り心頭の先程の言葉が飛び出てきたのだった。

「小蔦の技術は何の問題もない、私が保証する！やめる必要なんかないからね！？」

「……はい、ありがとうございます」

真っ直ぐ見つめながら言ってくる先輩に藍里は一瞬だけ目を丸くすると、すぐに嬉しくなって微笑んだ。