ーー首筋って、フェロモンが一番出るところらしいよ!で、その人の匂いが好きだと思ったら、それは遺伝子レベルで好きだって事なんだって!

と、高校時代に千栄が言っていたことを唐突に思い出してしまい、藍里は心臓が痛いほど高鳴りだした。

ーーどうしよう……。今まで意識したことなかったけど智君の香り、すごく好きかも……。

そういうことは、そういうことなのだろうかと藍里が一人で慌てていると、くいっと髪が引かれる感覚があった。

「……何かつけてるのか?」

「な、にか……?」

「ヘアオイルとか、そういう匂うやつ」

言いながら一房手に取ったらしい髪に顔を近づけて匂ったのを見て藍里は真っ赤になると、勢いよく首を振った。

「な、何も……何もつけてないよ」

髪が滑り落ちてしまい、何もなくなった手を暫し見ていた智大は、ああ。と何か思い当たったように声を漏らすと、顔を僅かに傾けて藍里の首筋に顔を埋めたかと思うとクンと匂いを嗅いだ。