藍里が出てくるまで寒い廊下で待ってくれていた智大は、入れ代わるように風呂に入っていった。
いつもよりも長い時間、冷水を頭から浴びながら藍里のあられもない姿を見てしまったことや、素肌に触れてしまった為に込み上げてくるものを必死に堪えていることなど知る由もなく、藍里はキッチンで温かい料理を作っていた。

時折無意識に視界に入れてしまうテレビ台の引き出しに身震いしていると、智大が風呂から上がってきた。

「飯は?」

「あ……もうすぐ出来るから、少しだけ待ってくれる……?」

「いや、手伝う」

藍里の背後に立つと馴れた手つきで皿を用意したりコップを用意してくれる智大に、藍里は自然と入っていた肩の力を抜いた。
二人で協力したのもあって料理は短時間で完成し、食べ終わるのにもそう時間はかからなかった。

いつも晩ご飯が終われば、その後は二人それぞれ自由な時間を過ごしていた。

智大は意外と読書好きで難しそうな本を読み、藍里は前までは智大の傍にいるのに息が詰まってしまうので早々に寝室に逃げていたのだけれど、今日は楽しいことも不思議なことも怖かったことも色々ありすぎたからか、まだ一人になりたくなくて手持ち無沙汰になりながらリビングのソファに座っていた。