〈智大side〉
「永瀬、今から訓練か?」
話しかけられて振り返ると、そこには訓練服に身を包んだ先輩で、所属している班の責任者でもある室山がこちらに向かって歩いてきていた。
「最近一緒に組んでなかったな。どうだ、久しぶりに手合わせしないか?」
「はい、すぐに用意します」
「あー、別に急がなくていいって。今何の事件もなくて平和そのものだろ?こんな時くらいゆっくりやろうぜ」
「責任者が何を言ってるんですか。その気の緩みがミスを引き起こすんですよ」
何て無責任なことをと少し呆れながらそう言うと、室山は気分を害することなく楽しそうに笑った。
昼夜問わず鍛えてきた自分よりも遥かに体格の良いその体は、長年自分に厳しくしてきた証拠だ。
その体格に似合った強面ながらも豪快で明るく時にざっくばらんな性格の室山はここ、警察の特殊捜査班の中でも人気で、任務の時のストイックさもあって信頼も厚い。
そんな室山も藍里にかかれば恐怖の対象の何者でもないのだろうけど……。
そう思いながら手早く訓練服を着て準備をすると、室山と共にロッカールームを出た。
そして目の前を歩く室山の背を暫く見てから歩いている廊下の窓から見える晴れ渡った空に目を向けた。
威圧してばかりだと誰もついてこないし、信頼関係も築けない。
警察と言う職に就いてから信頼が築けていない上官も築けている上官もどちらも目の当たりにしてきたし、智大自身もどちらのタイプの上官も経験した。
だからこそ、室山のように信頼される男になりたいと、そう振る舞えるように努力をしてきたつもりだった。
なのにただ一人、藍里にだけは今も昔も上手く振る舞えない。
この現状に智大は苛立ちと焦りを誤魔化すかのように乱暴に頭を掻きむしった。
「永瀬、今から訓練か?」
話しかけられて振り返ると、そこには訓練服に身を包んだ先輩で、所属している班の責任者でもある室山がこちらに向かって歩いてきていた。
「最近一緒に組んでなかったな。どうだ、久しぶりに手合わせしないか?」
「はい、すぐに用意します」
「あー、別に急がなくていいって。今何の事件もなくて平和そのものだろ?こんな時くらいゆっくりやろうぜ」
「責任者が何を言ってるんですか。その気の緩みがミスを引き起こすんですよ」
何て無責任なことをと少し呆れながらそう言うと、室山は気分を害することなく楽しそうに笑った。
昼夜問わず鍛えてきた自分よりも遥かに体格の良いその体は、長年自分に厳しくしてきた証拠だ。
その体格に似合った強面ながらも豪快で明るく時にざっくばらんな性格の室山はここ、警察の特殊捜査班の中でも人気で、任務の時のストイックさもあって信頼も厚い。
そんな室山も藍里にかかれば恐怖の対象の何者でもないのだろうけど……。
そう思いながら手早く訓練服を着て準備をすると、室山と共にロッカールームを出た。
そして目の前を歩く室山の背を暫く見てから歩いている廊下の窓から見える晴れ渡った空に目を向けた。
威圧してばかりだと誰もついてこないし、信頼関係も築けない。
警察と言う職に就いてから信頼が築けていない上官も築けている上官もどちらも目の当たりにしてきたし、智大自身もどちらのタイプの上官も経験した。
だからこそ、室山のように信頼される男になりたいと、そう振る舞えるように努力をしてきたつもりだった。
なのにただ一人、藍里にだけは今も昔も上手く振る舞えない。
この現状に智大は苛立ちと焦りを誤魔化すかのように乱暴に頭を掻きむしった。



