すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「これに合う靴と鞄……他にもアクセサリーなどがあれば選んでください。このまま着ていくので、タグも外してもらえますか？」

「「「「はい、かしこまりました」」」」

智大の言葉に藍里がくらりと目眩を起こしかけている間に店員達は、またも素晴らしい笑顔で靴やらアクセサリーなどを選んでいく。
本当に一式、それも値段を見ずに店員達に選ばせる智大は、店側からしたら願ってもない上客なのだろう。

再び店員にあれやこれやと色々あてがわれ、やっと解放されてぐったりした時にはすでに会計が終わっていた。

「あ、あの……お金……」

「いらない」

さっきのように手を繋ぎ、気になる代金の事を告げれば返ってきたのは素っ気ない返事。
俯き、歩く足の動きに合わせて心許なく揺れるワンピースの裾を見つめていると、急に立ち止まった智大がぐいっと手を引っ張った。

「わ……っ！？」

「妻の服を、夫の俺が買って着せるのはおかしいか？」

じっと見下ろされながら問われた質問に、藍里はよく考えるまでもなく首を横に振って否定した。
今までそんなことがなかっただけで、別にどこもおかしいことなどないのだと、そう思った。