「好きじゃないけど、お前が飼いたいなら飼ってもいい。実家にいる、ムラサメ?って言う犬を連れてきてもいい」

「飼ってもいいって……智君、犬アレルギーなんだよね?」

「何でそれを……兄貴か」

結婚した時には智大がアレルギーだと知らなかったので、連れていこうとしていたムラサメさん。
それを止めたのは申し訳なさそうな顔をした圭介だった。
智大は眉を潜めると深く息を吐いた。

「圭介さんに言われなかったらムラサメさん、連れてきちゃうところだったよ。……何で言わなかったの?」

「……お前が犬好きなのは知ってたから、俺が我慢すればいいだけなら我慢するつもりだった」

「だ……駄目だよ!アレルギーってちゃんと対処しないと大変なことになるんだからっ!それに、自分だけが我慢すればいいなんて絶対駄目!!」

両手を握って力説すると、その剣幕に驚いたのかリス達が一目散に逃げていってしまった。
その事には目もくれずに、藍里はこれだけはしっかり言わないといけないと思ったのだ。

アレルギーを侮って犬を飼って症状が酷くなり、結果的に犬を手放したと言う話もよく聞く。
どちらも特をしないそんな飼い方は絶対駄目だし、何よりそんなことを一人で我慢すると言うのはもっと駄目だと思って真っ直ぐ目を見て訴えると、智大は目を丸くした後、堪えきれないと言うように笑いだした。