すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

ーーどうしよう……すごくやりづらい……!

ブレイブのカウンセリングも終わり、いざブレイブのブラッシング、爪切り、足裏のバリカンなどをしていると、ガラス張りの向こう側から吉嶺の食い入るような視線が絡み付いてくる。
ブレイブが気持ち良さそうにすれば藍里も一緒に目を細め、不安そうな表情をすれば声をかけて安心させているが、その都度吉嶺が羨ましそうな顔をブレイブに向けていて、正直気が散ってしまう。

「本当、何なのあの人。小蔦の知り合いなのよね?」

「知り合いと言いますか……。昨日初めて会って、いきなり運命だって言われました」

「は?運命?」

意味が分からないと言いたげな先輩に、藍里は昨日の出来事を簡単に、吉嶺の職業だけは伏せて話した。

「なるほど、それであの人は小蔦に猛アタック中なのね?でも、職場にまで来るってどうなのよ」

「その点は私もビックリです……」

交番で保護された時に確かに職業と職場の話はしたが、まさか訪れに来るとは思わなかった。
それも会った翌日にだ。

「ま、害は無さそうだから相手が諦めるまで放っておくしかないかしら……すごく鬱陶しいけど」

そう言った先輩と二人でガラス張りの向こうへと視線を向けると、目が合った吉嶺が笑顔で手を振っていた。