「何やってんだ、お前は。一歩間違えれば犯罪にもなりかねないぞ?」

「え、どこが?ブレイブのおかげで運命の人に巡り会えて、感動のあまり気絶してしまった彼女を介抱するためにここに連れてきただけだろ。
……本当なら俺の家に連れて行きたかったのを我慢したんだ」

「とりあえず、男のお前が初対面の女性の承諾なしに、勝手に家に連れ込むのは犯罪臭しかしないからな?」

どこからか声が聞こえ、藍里はゆっくり目を覚ました。
見知らぬ天井に見知らぬ部屋。
見たことのない布団に寝かされているのに気付いて藍里は飛び起きた。

ーーど……どこ、ここ……。

もしかしてまた連れ去られてしまったのかと、サーッと血の気が引くのを感じながら急いで布団から出て一つしかないドアに飛び付こうとしたが、その前にドアが開いて固まった。

「ああ、物音がしたので様子を見に来たんですけど、気が付かれたようで良かった」

「え……け、警察……?」

目の前にいる男性は警官の格好をしていて、笑顔を見せている。
藍里が目を丸くしているとその警官の後ろ、先程のレトリーバーとその飼い主がドアと警官の隙間から顔を覗かした。

「運命の人……っ!ようやく目覚めたんですね!」

「っ!?」

「おい、吉嶺止めろ。見るからに怯えてるじゃないか」

今にも飛びかかってきそうな吉嶺と呼ばれた男性に藍里は急いで距離を取り、部屋の奥、壁際まで逃げた。
そんな藍里と、状況を全く判断していない吉嶺の間に挟まれる形となった警官は、大きな溜め息をついたのだった。