「何なんですか先輩!いいじゃないですか、本当の事なんですから!」

「いい加減黙れ。摘まみ出すぞ」

「いいえ、ここまできたら黙りません!聞いてください奥さん、先輩って職場で奥さんの話全然してくれないんですよ!?
そんなに奥さんの情報を知らせたくないんですかね?分かります、分かりますよ?だって、特殊班にいる筋肉だるまみたいな男達は小柄で守ってあげたくなるような女性がタイプでしょ?正しくそんな感じのこんなに可愛い奥さんの話をしたら、独身の奴等に恨まれるでしょうし!」

「か……かわ……えぇ……」

完全に酔って変なスイッチが入ってしまったらしい入江は、凄い剣幕で智大が職場で藍里の話をしない鬱憤をぶつけるかのようにひたすら話す。
藍里は頑張って話を聞いていたが、耳馴れない言葉を聞いて思わず話を止めてしまった。

「可愛く、なんて……誰からも言われたことないですし……。その、職場で私の事を話さないのも、ただ私みたいなのが妻だと知られるのが嫌だったと……」

「え?まさか本気でそんなこと言ってるんですか?先輩、駄目ですよ!ちゃんと奥さんに可愛いとか好きだとか言わないと、愛想つかされちゃいますよ?」

「もうお前、本気で黙れ」

どんどん不機嫌になっていく智大に、酔っているせいでそれに全く気付かない入江。
そんな二人を前におろおろしていると、さっきまで腹を抱えて笑っていた室山が見かねて口を開いた。