「あ、先輩の奥さんじゃないですか?」
「え?」
仕事帰り、前に圭介と偶然会った公園の前を歩いていたらランニングウェア姿の知らない男性に笑顔で話しかけられて固まった。
奇遇ですねー。と笑顔で近付いてくる男性に恐怖を感じてじりじりと後退していると、それに気付いた男性が立ち止まり、慌てて両手を胸の前辺りで振った。
「あ、男性恐怖症でしたね。忘れてました、ごめんなさい。これ以上僕からは近付かないので逃げないでください。
……でも、距離が遠いので少しだけでも近付いてもらえませんか?」
ね?と困ったような笑顔を浮かべながら首を傾げた男性を前に藍里は簡単に頷けなかった。
男性との距離は四メートルほどで、確かに話すには少し遠く感じる。
けれど誰なのか知らない相手にこれ以上近寄るのも怖くて藍里は恐る恐る口を開いた。
「あの……どなた、でしょう……?」
「え?あ、そうでした、ちゃんとお会いするのは初めてですね。僕、永瀬先輩の後輩の入江と言います。
銀行強盗の時と、公園での奥さんの警護、それから連れ去り事件の時にも会ってるんですよ。……奥さんにとっては全部それどころじゃなくて覚えてないかもしれないですけど」
そう言って人懐っこい笑みを浮かべた入江に藍里は逃走犯に連れ去られる前に見かけた帽子の人物を思いだし、あの時の……。と目を丸くして少しだけ警戒を解いた。
「え?」
仕事帰り、前に圭介と偶然会った公園の前を歩いていたらランニングウェア姿の知らない男性に笑顔で話しかけられて固まった。
奇遇ですねー。と笑顔で近付いてくる男性に恐怖を感じてじりじりと後退していると、それに気付いた男性が立ち止まり、慌てて両手を胸の前辺りで振った。
「あ、男性恐怖症でしたね。忘れてました、ごめんなさい。これ以上僕からは近付かないので逃げないでください。
……でも、距離が遠いので少しだけでも近付いてもらえませんか?」
ね?と困ったような笑顔を浮かべながら首を傾げた男性を前に藍里は簡単に頷けなかった。
男性との距離は四メートルほどで、確かに話すには少し遠く感じる。
けれど誰なのか知らない相手にこれ以上近寄るのも怖くて藍里は恐る恐る口を開いた。
「あの……どなた、でしょう……?」
「え?あ、そうでした、ちゃんとお会いするのは初めてですね。僕、永瀬先輩の後輩の入江と言います。
銀行強盗の時と、公園での奥さんの警護、それから連れ去り事件の時にも会ってるんですよ。……奥さんにとっては全部それどころじゃなくて覚えてないかもしれないですけど」
そう言って人懐っこい笑みを浮かべた入江に藍里は逃走犯に連れ去られる前に見かけた帽子の人物を思いだし、あの時の……。と目を丸くして少しだけ警戒を解いた。



