すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「何、これ……」

ーー誰かがどこからか見てる……？いつも？どこから……？

どれだけ便箋を見てもそれ以上の事は書いてないし、封筒にもやはり何も書かれていない。
気味が悪いと思いながらも、どうしたらいいか分からず途方にくれていると着替え終わった智大が戻ってきた。

「藍里？」

「っ！！」

急に背後から声をかけられて、藍里はあからさまに驚きながら便箋をチラシの隙間に隠した。

「な……何？」

「顔色悪いな。飯の準備もまだだし、体調が悪いのか？」

「だ、大丈夫……ちょっと貧血気味……かな？ぼんやりしちゃっただけ」

咄嗟に苦笑いを浮かべて誤魔化すが、智大は眉間に皺を寄せて藍里の態度を怪しんでいるようだった。

「ぼんやりするな、邪魔になる。そこに座っとけ」

「あ……」

きっぱりと言われたせいでさらに顔色を悪くした藍里に気付いた智大は、苛立たしげに舌打ちした。

「違う、言い方を間違えた。ぼんやりするくらい疲れてるんじゃないかって心配なんだ」

「心配……？」

「持病もあるし、昔からそんなに体力ないだろ？……疲れてるならゆっくり休めば良いと、そう言いたかったんだ」

ぶっきらぼうで不器用な物言いに藍里は数回瞬きすると、現金にもさっきまでの重たかった心が嘘のように軽くなった気がして藍里は小さく笑みを浮かべた。