すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「……食事にするか」

「う、うん」

腕の力が緩み少し体を離されると、智大は着替えるためにリビングを出た。
藍里は智大がいなくなると同時に腰が抜けたようにその場にペタンと座り込んでしまう。

何となく、智大は藍里の心境の変化に気付いているような気がする。
その証拠に今までは寝る時だけだったスキンシップをさっきのように何でもない時にするようにもなってきたし、その時に藍里が怖がっていないかの確認もしなくなっていた。

「絶対……絶対気付いてるよね……」

両頬に手を当てると熱くなっている。
顔が赤いということを知らしめられているようで藍里は慌てた。

「こ、こんな顔のままじゃ智君の前に出れない……。何か気の紛れることして熱を冷まさないと……」

ご飯はすでに準備してあって、すぐに用意が出来てしまうので時間稼ぎにならない。
藍里はテーブルに置きっぱなしだったチラシを見つけてその整理をしようと思いついた。

「だ、出しっぱなしじゃだらしなく思われちゃうから……」

決して顔の熱が冷めるまでの時間稼ぎなどではないと自分に言い聞かせながら不要な物と必要な物を分けていると、一つだけ異質な封筒を見つけた。

真っ白なその封筒は表も裏も何も書かれていなかった。
不思議に思いながら封筒を開けて中を見てみると、一枚だけ封筒と同じ白い便箋が入っていた。

何の気なしに取り出して便箋を開き、書かれていた文字に目を走らせると藍里は背筋を凍らせた。

その便箋には、“いつも貴女を見ています。”とだけ書かれていた。