〈智大side〉

『こづたあいりです』

初めて会った時、何て小さくて可愛いのだろうと、雷に打たれたような衝撃を感じ、五歳ながらにして恋に落ちたのだと分かってしまった。

ーー可愛い。すごく可愛い……!

にこにこ笑いながら隣に座っている小さな女の子。
ドキドキする胸の鼓動にどうしたらいいか分からず、でも何か話さないと、とも思って焦って口から出た言葉は本来、微塵も思っていない言葉だった。

『なにヘラヘラわらってんだよ、チビ』

こっちを見る藍里は驚いた様子だったが、誰よりも自分自身が驚いていた。
丸い大きな瞳がさらに見開かれてじっとこっちを見ている。
そんな表情にさえも智大の心臓は鼓動した。

ーー可愛い……。

そう思いながらも智大は混乱していた。
どうしよう、どうしよう。と慌てて、何か言わないと!と口を開いて出た言葉は……。

『こっちみんな』

最悪だったーー。

それからも智大は藍理に対して素直になれない態度をとっていた。

一度そんな態度をとってしまったら元に戻すのが難しくて、幼いながらに智大はしても遅い後悔を何度もすると同時に罪悪感に苛まれ、そんな時には必ずお風呂で水を頭から被るようになった。