「どうせ持ってくる奴も警察だろうが！隙を見て捕まえようったってそうはいかねぇよ！！」

『持っていく人物は警察ではない、医療従事者だ。頼む、薬を渡す際に簡単な診察だけでも受けさせてほしい』

「んなもん誰が了承するかっ！！この女は永瀬って奴を誘き寄せる為のただの餌だ！！発作でどうなろうが知ったこっちゃねぇっ！！」

『……分かった。分かったから興奮しないでくれ。そちらの要求は永瀬を連れてくることか？』

「そうだ、早く連れてこいっ！！俺の計画を邪魔したんだ、後悔させてやるっ！！」

『永瀬は今別件で出払ってて不在だ。もう少し待っててくれ』

そう言うと男性は拡声器を下ろしていつの間にか傍に控えていた同じ武装した数人に何かを指示していた。
男は智大がここにいないと知り舌打ちすると、藍里の腕を引き窓から離させると乱暴に窓を閉めた。

「妻が人質になってんのにえらく余裕だな、お前の旦那は……。でも、もうすぐ終わりだ……お前を使って、あいつが俺の邪魔したことを死ぬほど後悔する顔を見れるんだからな」

憎しみがこもった目を向けて笑みを浮かべる男を見て藍里は瞬時に理解してしまった。
この男は智大が現れても藍里を無傷で解放するつもりが一切ないことを……。