「なんだそれは」
「っ……!」
晩ご飯を前にテーブルを挟んで向かい合わせに座ると、いただきます。と手を合わせた。
その時に見えたのだろう藍里の左腕の外側に真新しい傷跡がついているのに智大が気付き、短い言葉で話しかけてきた。
「こ、れは……仕事で……」
「また動物か」
トリマーとしての仕事柄、腕などに生傷が絶えないのは致し方ないのだけれど、それを智大はあまり快く思っていないのか毎回傷を見つけてはあからさまな溜め息をついていた。
「そんなに頻繁に引っ掛かれるってことは技術に問題があるんじゃないか?」
「それは……」
「そんな技術でペットに触られたら飼い主も迷惑だろ。……いい加減辞めたらどうだ」
「……っ!?」
今まで仕事のことで言及されたことはなかったのに、突然言われた言葉に愕然としてしまった。
それから何か言われたのかどうか覚えていないけれど、いつの間にか食べ終わっていた智大は食器を流し台に置くとお風呂に向かったらしく、気が付いたら姿がなかった。
「……ご馳走でした」
一口も食べていなかったけれど、藍里はもう食べる気力がなくなってしまった。
お皿にラップをして冷蔵庫に入れると、いつもより足取り重く寝室に向かう。
そしていつものように鍵付きの箱を開けて数種類の薬を取り出すと躊躇いなく飲み込み吸入をし、ベッドの端に潜り込んで小さく丸くなると強く目を閉じた。
「っ……!」
晩ご飯を前にテーブルを挟んで向かい合わせに座ると、いただきます。と手を合わせた。
その時に見えたのだろう藍里の左腕の外側に真新しい傷跡がついているのに智大が気付き、短い言葉で話しかけてきた。
「こ、れは……仕事で……」
「また動物か」
トリマーとしての仕事柄、腕などに生傷が絶えないのは致し方ないのだけれど、それを智大はあまり快く思っていないのか毎回傷を見つけてはあからさまな溜め息をついていた。
「そんなに頻繁に引っ掛かれるってことは技術に問題があるんじゃないか?」
「それは……」
「そんな技術でペットに触られたら飼い主も迷惑だろ。……いい加減辞めたらどうだ」
「……っ!?」
今まで仕事のことで言及されたことはなかったのに、突然言われた言葉に愕然としてしまった。
それから何か言われたのかどうか覚えていないけれど、いつの間にか食べ終わっていた智大は食器を流し台に置くとお風呂に向かったらしく、気が付いたら姿がなかった。
「……ご馳走でした」
一口も食べていなかったけれど、藍里はもう食べる気力がなくなってしまった。
お皿にラップをして冷蔵庫に入れると、いつもより足取り重く寝室に向かう。
そしていつものように鍵付きの箱を開けて数種類の薬を取り出すと躊躇いなく飲み込み吸入をし、ベッドの端に潜り込んで小さく丸くなると強く目を閉じた。



