「返信したの?」
と訊かれて、わたしはすぐに
「ううん、今は中岡さんと一緒だから。後で大丈夫」
と答えた。
中岡さんは笑って、そうか、と受け流しただけだった。それだけのことなのに、かすかに、淋しくなった。
トイレから戻って来ると、何かの薬をショルダーバッグにしまう中岡さんが見えた。風邪かな、と少し気にかかった。
店を出て、神社で参拝してから歩いていくと、鬱蒼とした茂みの間から、ぱっと水平線が見えた。海沿いに広がった街が一望できた。山のほうでははらはらと桜が散っている。頭の中がからっぽになっていく。
「すごい、久しぶりに休んだ気がする」
わたしたちは石段に腰掛けた。
「疲れてたのは、仕事だけのせい?」
「えっと、どういう意味?」
「会ったときに、ちょっと悩んでる顔してたから。俺みたいなおっさんにできるのは、話を聞くくらいだけど」
中岡さんがそんな言い方をしたので、短く切った髪にチラチラと混ざる白いものを初めて意識した。
「仕事……だけどちょっと違うかも」
と独り言のように呟く。付き合ってもいないに甘えたり頼ったりすることを、わたしは怖がっている。
と訊かれて、わたしはすぐに
「ううん、今は中岡さんと一緒だから。後で大丈夫」
と答えた。
中岡さんは笑って、そうか、と受け流しただけだった。それだけのことなのに、かすかに、淋しくなった。
トイレから戻って来ると、何かの薬をショルダーバッグにしまう中岡さんが見えた。風邪かな、と少し気にかかった。
店を出て、神社で参拝してから歩いていくと、鬱蒼とした茂みの間から、ぱっと水平線が見えた。海沿いに広がった街が一望できた。山のほうでははらはらと桜が散っている。頭の中がからっぽになっていく。
「すごい、久しぶりに休んだ気がする」
わたしたちは石段に腰掛けた。
「疲れてたのは、仕事だけのせい?」
「えっと、どういう意味?」
「会ったときに、ちょっと悩んでる顔してたから。俺みたいなおっさんにできるのは、話を聞くくらいだけど」
中岡さんがそんな言い方をしたので、短く切った髪にチラチラと混ざる白いものを初めて意識した。
「仕事……だけどちょっと違うかも」
と独り言のように呟く。付き合ってもいないに甘えたり頼ったりすることを、わたしは怖がっている。



