参道を上がると、お土産物屋や食べ物屋には人が溢れていた。軒下で汚れた猫がごろごろしている。好き放題に撫でられても、でろーんと余裕でお腹を出している。
「ななちゃんみたいだな」
と中岡さんが言った。

「この前、うちに蟹鍋しに来たとき。あんなふうに溶けて、ソファーに寝っ転がってたから」
「そんなことないですよ。もっと緊張してました」
中岡さんは意外そうに
「えっ、そんなに?」
と訊き返した。わたしは首を傾げて、誤魔化した。

しらす丼のお店には長蛇の列が出来ていた。外のベンチに腰掛けて順番を待ちながら、中岡さんと喋っていると
「あ、ちよっと待って」
と彼がスマートフォンを取り出した。知らん顔をして空を仰いでいると、携帯操作を終えてから
「友達の彼女から、パソコン壊れたっていう相談のLINEだった」
とすぐに教えてくれた。わたしは、頼られてますね、と返した。
「まったくなあ、なんでも俺に訊けばいいと思ってるんだから」
「あ、」
「ん?」
俺、て言うんだ。心の中だけで呟く。そういうのを指摘するほどの関係なのか分からなくて
「順番もうすぐですよ」
とわたしは濁した。