見事なほどの青空が広がっていて、柔らかい風が気持ちよかった。
交差点の近くに黒いセダンが停まっていた。つやつやとしていて、手入れのよさが中岡さんらしいな、と思いながら近付いた。助手席のドアが開く。

「どうぞ」
と笑った彼はストライプのシャツにカーキ色のチノパンを穿いていた。おそろいみたい、と思いながら乗り込む。

「会うのって、うちで蟹鍋食って以来だっけ?」
「そう、ですね。先月だったかな」
「あの時はゆっくり話せたけど、その後、急にばたばた納期が迫って忙しくしてたからな。LINEの返事とかも適当でごめん」
気にしてない、と首を横に振る。本当は中岡さんが忙しくしていると、ちょっとほっとするのだ。自分ばかりが仕事で都合をつけられないと申し訳ないから。

「今日なんか僕ら、おそろいみたいな格好してる」
彼がシャツの袖を捲った。太い血管が浮いているのを見て、ドキッとした。中岡さんの運転はけっこう速度を出すわりには、安定していて快適だ。

海沿いの国道を走っていると、緑色の島が見えてきた。平日だというのににぎわっていて、ハイキングみたいにリュックを背負った年配の人たちが目立つ。

駐車場に停めて、道へ出ると、もくもくと煙が立ちのぼり、焼きイカやサザエのつぼ焼きの香ばしい匂いが、潮風に乗って流れてきた。