「ねぇ鈴華」
「うるさい、手どけて」

離れたいけど背中にまわされている片手のせいで、先ほどから優翔と密着状態である。

そろそろ限界だ。


「さっきまで泣きそうになってたくせに」
「……っ、それ、は…」

「どうして泣きそうになってたの?」
「知らない」

「俺に彼女ができたら嫌?」
「……うん」


それは絶対に嫌だ。
そのため素直に頷くと、優翔は目を細めて笑った。


「もー、そんなかわいいことしないで。
大丈夫、俺の目には鈴華しか映ってないよ」


今ので満足したのか、ようやく私を離してくれた優翔。

かと思えば今度は子供扱いするかのように、頭を撫でてきた。



「そんなの、信じない…」

期待させるようなこと言って。

“好き”や“彼女にしたい”という肝心な部分は言ってくれないため、その言葉が冗談なのだとわかる。