そろそろ花火が上がる頃だ。

瑠奈と2人で見たかったんだけどな~

楽しそうに並んで歩く結城兄妹の後ろをつまらなさそうに見ながら着いていく龍。

周りから見たらさぞ不思議な構図だろう。

先程から祭り客も増えてきて、歩くのももうすぐ困難になるんじゃないだろうか。

待ち合わせた頃より大分日も落ちてきた。

初デートなのになぁと何度も心の中で思い、またため息をつく。

「お、そろそろ花火の時間だな」

彩月がわざとらしく瑠奈に言う。

そもそも一緒に見るつもりだったんだろーが!と龍はヤケクソ気味で眉間にシワを寄せる。

「もうそんな時間?じゃあ私達そろそろ行くね、彩月くん」

「「はっ?!」」

瑠奈の言葉が理解出来ずに彩月とハモる羽目になった。

でもどう言うことだ?

ずっと彩月の隣にいた瑠奈が龍の左側に移動する。

「だって浴衣で花火デートは彼氏とって決めてるんだもん。彩月くんは軽くお邪魔虫だよ~露店は一緒に回ったんだからもう良いでしょ?じゃあね~」

そう早口で彩月を捲し立てると瑠奈は龍の手を取り、花火の打ち上げ会場へ向かう。

瑠奈に引きづられるようにして歩く龍も、まさか溺愛している妹に邪魔と言われ今にも風化しそな彩月。

「る、瑠奈!良いのか?彩月放ってきても」

「あんなシスコンの度を超えたドスコンは少し痛い目に合わせないときっと次も偶然を装って付いてくるからあれぐらいきっぱり言わないと!」

瑠奈は気付いていたのだ、彩月のシスコンが度を超えていることを。

飴と鞭作戦で先に飴を与えていたのだ。

「いつから気付いてたんだ?」

「昔から気付いてたよ?でも特に害がないから放置してたの。でも流石に初デートを邪魔してきたんだからお仕置きしないとね~」

のんびりおっとりとした口調で凄いことを言う瑠奈に少しビックリしながらも龍はもう一度繋いだ手を強く握り直した。

「惚れ直したわー」

「ふふふ」

そして夜空に輝く大輪の華々を2人は寄り添って最初から最後まで眺めることが出来た。