【佐倉鈴side】
輝は励ましてくれてるけど、分かるんだよ。私。
命はもう、残り少ないこと。
だから、輝が少し急いで絵を完成させようとしていること。
…病院の先生が私を元気づけようと毎日笑顔で接してくれていること。
「鈴、おはよう」
「おはよう輝。」
輝はわざわざ遠回りして私を迎えに来てくれる。
輝の家から私の家は反対なのに、わざわざ遠回りしてまで送り迎えしてくれる。
今日も病院まで迎えに来てくれた。
輝の自転車の後ろに乗って学校まで向かう。
輝は髪を切って少し爽やかになった。
「…輝、髪ずっとそのままがいいなあ…」
「…伸びるからねえ、また元に戻っちゃうや。」
輝が少し爽やかになったからなのか。
前みたいに磯ヶ谷くん達に呼び出されることも無くなった。
むしろ、女の子の友達からは輝と付き合ってるの?とまで聞かれるようになった。
私は…輝とそう言う関係に…なりたいと思ってるけど…
多分輝は私をそういうように見てないから…
いくら私がそうなりたくても無理だ…
「輝、ちょっと力着いた?」
「何言ってるの、僕は元々ムキムキだよ。」
冗談は顔だけにしなさいと言いたいけど言えない。
実際少し背も伸びたし力もついた。
「…そうだね。」
「ん?今日はやけに素直だね。」
信号待ちで止まった輝が私を向いて驚いた顔をする。
「大丈夫?しんどくない?」
輝は優しい。
いつだって私を気遣ってくれる。
私の中で、輝の存在がどんどん大きくなっていく…
「…大丈夫だよ。」
…輝…
私輝のこと、大好きだよ。
輝は…どうなの?
「…そう?ならもう少し頑張ってくれる?」
私はいつまでも学校につかなければいいのにって思ってる。
輝とこうして居られるから。
私…このまま時間が止まればいいのにって思ってる。
それくらい輝のことが好きなんだ。
「…好き…」
「ん?」
聞こえないように、漕いでる時に呟いた言葉。
「なんでもないよ。」
…ほんと。
どうせ死んでしまうのに、私…
何を考えてるんだろうね。
【佐倉鈴side END】

【卯月輝side】
…鈴は今、何を考えてるんだろう。
僕には、鈴の考えてることが分からない。当たり前だけど。
「輝、毎朝ありがとうね。」
「何言ってるの。いいに決まってるでしょ。」
「だって、いつも、遠回りしてもらってるし、私のわがままで…」
鈴は人に礼儀を感じすぎてるんだよ。