「ちょっと武瑠!」
「着いた!」
俺の家に到着。
輝は後ろから降りて俺を軽く睨む。
「いいから来いって。」
輝の腕を掴んで俺は家の中に入る。
「兄ちゃんおかえりー!」
「ただいまー」
玄関に入ったら弟が出迎えてくれる。
「兄ちゃん今日ばいとは?」
「今日はお休みだぞー」
一番下の弟の嵐。
4歳だ。
「兄ちゃんのお友達?」
「そうだぞ〜」
「かあちゃーん!」
嵐はとてとて走りながらリビングに戻っていく。
「武瑠おかえり。」
「ただいま母さん。」
エプロン姿で玄関に出てきた母さん。
「お友達?ゆっくりしていってね。ご飯一緒に食べましょ。」
母さんは優しい。
輝はぺこりと頭を下げている。
「卯月輝って言います。お邪魔します…」
他人の家には行き慣れてないのか緊張してる。ウケる。
「ふふ、ゆっくりしていってね。」
母さんはやんわり微笑んでまたリビングの方に消えていった。
輝を連れて俺は2階の自分の部屋に向かう。
「ここ俺の部屋ー」
「おおお…」
輝の部屋は何も無いからなあ…
俺の部屋がごちゃごちゃあるように見える…
そういや1回だけ鈴ちゃんの家にも行ったなあ。
綺麗に片付けられてていい匂いした。
「さてさて輝。」
「ん?」
「将来の夢は?」
輝は『いきなり何言ってんだこいつ』みたいな顔して眉間にシワを作ってる。
親交深めたいんだけどなあ…
「…みんなを幸せに出来るような画家…」
「うんうん。」
輝はポツポツ話し始めて真っ直ぐ俺を見る。
「鈴ちゃんのことは?」
「…めちゃくちゃすき…
僕にとっての太陽みたいな人…」
…輝、鈴ちゃんのことめちゃくちゃ好きじゃん…
一時でも嫉妬してた俺が馬鹿みたいだ。
こんなに優しくてこんなに心が温かいやつ、初めて見たよ。
きっと、輝は誰よりもカッコイイ。
「輝にとっての友達は?」
「え、武瑠僕の友達じゃないの?!」
…しまった。
聞き方間違えた。
「もちろん俺はお前の友達だよ。」
「…武瑠とはもっと仲良くなりたいと思ってる…
…ははっ、2年までいじめられてたのに…」
クシャッと顔を綻ばせて笑う輝。
…なんだよ、ちゃんと笑えるじゃん…
「いやあ…あん時は悪かったな。」
「いいんだよ。今こうして仲良くしてくれているから。」
満足気な顔をして俺の手を握る輝。
「…俺ともっと仲良くなってくれる?」
「もちろん。僕ももっと仲良くなりたい。」
こんなに俺に向かって優しく笑ってくれるやつ、輝以外に居ないかもなあ…