必要なもの以外何も無い部屋。
余計なものを寄せ付けない雰囲気。
「あ、これこれ。」
「どれ?」
輝の絵の中で俺が一番好きなこの絵。
「…ああ。それか。」
絵の中で唯一これにだけタイトルがついてる。
「…またね。…これが一番好きだ。」
「これは元々鈴のために描いた絵だよ。」
…鈴ちゃんの体を治すために自分の命投げ出そうとしたんだもんな…
「お前の絵の中の人の表情って…」
「?」
…前から思ってたけど…
「…笑顔、がないよな」
「…考えたこと無かった。」
どの絵を見ても、悲しそうな表情。
このまたね。の絵も…
天使の顔は涙を流していながら口元だけは笑ってるし…
純粋な笑顔がない。
どの絵も、悲しそうに笑ってる。
「…1度だけ、本当の笑顔を描いたことがあるんだ。」
「その絵は?」
「鈴の所にあったでしょ。」
…あの絵?
鈴ちゃんの満面の笑顔だったけど…
「僕は、鈴の顔でしか笑顔は描けない。」
絵の前に正座して座る輝の顔はどこか寂しそうだ。
「…だからお前も満面の笑顔がないんだな。」
「?」
「お前が満面の笑顔になったことがないから描けないだけだ。」
…輝が笑顔になれば描けるんだから。
「…そうなのかな。」
「お前、心から笑ったことあるか?」
「鈴と遊園地に行った時…くらいかな」
「いつも微笑むだけの癖に。」
俺は輝の腕を掴む。
鏡の前に立たせて後ろから輝の頬を引っ張る。
「痛いよ…」
「笑ってみろ。」
「無理だよ。」
…いつも寂しそうに笑う輝。
こんな輝じゃないはずだ。
絶対、普通に笑ってたはずなのに…
「行くぞ。」
「どこに?」
「早く来い!」
輝は慌ててカバンを持つ。
家の鍵を閉めるのを確認して俺は輝を担ぐ。
「ちょ、危ないよ」
「いいんだよ!」
輝は背があまり高くない。
だから担ぐことも可能だ。
「よっと。」
輝を俺の自転車の後ろに乗せて自転車を漕ぐ。
「武瑠、僕自分のあるよ?」
「知ってるわ」
「どこに行くの?」
「うるせえ、捕まってないと落ちるぞ。」
輝は俺の背中に少し捕まって不思議そうな顔をする。
向かう先は俺の家。
こいつは楽しいことをあまり経験していない。
…鈴ちゃんとは別の意味で感情があまりない。
鈴ちゃんは病気だったから諦めていて感情がなかった。
けどこいつは父親を亡くして感情がなくなってしまった。
それがずっと続いていたんだ、感情を忘れてしまっていても無理はない。
余計なものを寄せ付けない雰囲気。
「あ、これこれ。」
「どれ?」
輝の絵の中で俺が一番好きなこの絵。
「…ああ。それか。」
絵の中で唯一これにだけタイトルがついてる。
「…またね。…これが一番好きだ。」
「これは元々鈴のために描いた絵だよ。」
…鈴ちゃんの体を治すために自分の命投げ出そうとしたんだもんな…
「お前の絵の中の人の表情って…」
「?」
…前から思ってたけど…
「…笑顔、がないよな」
「…考えたこと無かった。」
どの絵を見ても、悲しそうな表情。
このまたね。の絵も…
天使の顔は涙を流していながら口元だけは笑ってるし…
純粋な笑顔がない。
どの絵も、悲しそうに笑ってる。
「…1度だけ、本当の笑顔を描いたことがあるんだ。」
「その絵は?」
「鈴の所にあったでしょ。」
…あの絵?
鈴ちゃんの満面の笑顔だったけど…
「僕は、鈴の顔でしか笑顔は描けない。」
絵の前に正座して座る輝の顔はどこか寂しそうだ。
「…だからお前も満面の笑顔がないんだな。」
「?」
「お前が満面の笑顔になったことがないから描けないだけだ。」
…輝が笑顔になれば描けるんだから。
「…そうなのかな。」
「お前、心から笑ったことあるか?」
「鈴と遊園地に行った時…くらいかな」
「いつも微笑むだけの癖に。」
俺は輝の腕を掴む。
鏡の前に立たせて後ろから輝の頬を引っ張る。
「痛いよ…」
「笑ってみろ。」
「無理だよ。」
…いつも寂しそうに笑う輝。
こんな輝じゃないはずだ。
絶対、普通に笑ってたはずなのに…
「行くぞ。」
「どこに?」
「早く来い!」
輝は慌ててカバンを持つ。
家の鍵を閉めるのを確認して俺は輝を担ぐ。
「ちょ、危ないよ」
「いいんだよ!」
輝は背があまり高くない。
だから担ぐことも可能だ。
「よっと。」
輝を俺の自転車の後ろに乗せて自転車を漕ぐ。
「武瑠、僕自分のあるよ?」
「知ってるわ」
「どこに行くの?」
「うるせえ、捕まってないと落ちるぞ。」
輝は俺の背中に少し捕まって不思議そうな顔をする。
向かう先は俺の家。
こいつは楽しいことをあまり経験していない。
…鈴ちゃんとは別の意味で感情があまりない。
鈴ちゃんは病気だったから諦めていて感情がなかった。
けどこいつは父親を亡くして感情がなくなってしまった。
それがずっと続いていたんだ、感情を忘れてしまっていても無理はない。



