僕も今度から真似しよう。
「輝って、なんで2位なの?」
「僕は2位でいいから。」
1番は鈴でしょ。
鈴と仲良しの赤坂さんが3位だったよね?
「見てなさいよ、今度本気出さなかったら輝のこと嫌いになるんだから!!」
プンプン怒ってる鈴。
…そんな顔も可愛いです。
でも、鈴に嫌われるのは嫌だなあ…
…仕方ない。ちょっと勉強するか…
大体テストなんて授業聞いてたら分かるでしょ。
「分かったよ。」
僕は鈴のために仕方なく教科書を開く。
「さて、武瑠。」
「…はい。」
「勉強しようか。」

放課後になって。
僕は図書館に向かうことにした。
「…ふう…」
本当は勉強なんてしなくてもいいんだけど…
形だけでもしておくか…
「…あ…」
…しまった。
いつもの癖で絵画集の方へ来てしまった。
…まあいいか。
「…これいいな…」
僕の描き方と一緒だ。
優しいタッチ。
「あの…もしかして卯月輝さんですか?」
絵画集を立ち読みしている時にスーツをバッチリ着ている女性に声をかけられた。
「…そうですが。」
絵画集から目を離して僕は軽く会釈する。
「やっぱり!あなた画家の卯月さんなのね!」
…画家ではないけど…
ただの趣味程度の絵ですが…
「前にコンクールで優勝経験ありますよね。」
「…はあ」
「どうです?」
「…?」
「プロに、なる気はないですか?」
【卯月輝side END】

【磯ヶ谷武瑠side】
「…おーい。」
…なんだコイツ。
学校来てんのに心ここに在らずって感じだな。
「おい、輝」
「…」
「…チッ…」
俺は輝にデコピンした。
「いたっ」
「戻ってきたか。」
「ん?」
「鈴ちゃん心配してたぞ。」
朝から輝の様子がおかしいって。
「ああ、大丈夫だよ。」
「どーみても大丈夫に見えねえんだけど。」
輝は少し頭をポリポリ。
「実は昨日さ…
プロの画家にならないかって声をかけられたんだ。」
…輝が…
プロの画家に…?
「何それすげえじゃん!!」
「…そうだよね」
「なんか迷ってんのか?」
少し目を伏せた輝の顔は明らかに迷っていた。
「迷ってる…そうだね、迷ってる。」
「なんで?」
「僕の場合、ただの趣味程度の絵だよ。
それで生活していくなんて出来ると思うかい?」
…趣味程度であんだけ凄い絵が描けるんだからすげえと思うけど。
「お前はどうしたいんだよ?」
「…分からない。」
本人が決まってねえのに背中押したところでどうにもならないわな…