いっその事、抜かしてくれたら気が楽なんだけど…
「輝くんって、テスト勉強してるのかな?」
「どうだろう。
してるようには見えないけど。」
何せテスト期間でもお構いなく絵を描いてるからね…
いつだって絵が中心だから。あの人は。
「いつしてるんだろうね。」
「また聞いとくよ。」
…桃に言われて気づいたけど…
輝、勉強してるのかな?
してないと2位なんて取れないよね?
「鈴は勉強してるの?」
「してるよー」
してないといい点なんて取れません。
「そっかー」
「桃は?」
「してる。めちゃくちゃ。
それでも、抜けないツートップ。」
私が勉強してる時は輝が教えてくれるから特に考えてなかったけど…
輝、もしかしたら、わざと2位なんじゃ…
え、だとしたらなんか悔しい。
【佐倉鈴side END】

【卯月輝side】
「なあ、ここどーやってすんの?」
僕の席の前で頭を抱えているのは武瑠。
出席番号が前だから。
僕の前。
「ここはこの式を代入して…」
「なんで代入しなきゃなんねーの?」
「そういう問題だから。」
そんなのこんなめんどくさい問題作った人に言って。
「なんでこんなに公式覚えるのあるんだよ〜」
「覚えて。」
それも、こんなめんどくさい公式作った人に言って。
僕に言わないで。
「輝〜、どーしよ。」
「何が?」
「勉強出来ない。」
「知らない。」
武瑠が授業中寝てるのが悪いんでしょ。
僕は関係ない。
「今度から俺が寝てたら起こしてくれ。」
「えー…面倒くさいな。」
なんで僕が…
「あ、輝お勉強してるの?」
可愛い声と一緒に僕のクラスにやってきた鈴。
肩甲骨辺りまでの髪が優しく靡いている。
「僕はしてないよ。」
「武瑠がしてるの〜?」
「そうだよー、鈴ちゃんおしえてー」
「僕が教えないからって鈴に頼まない。」
武瑠は頭を抱えて教科書とにらめっこ。
…も10秒ほどで終了。
携帯のゲームであそび始めた。
…勉強する気あるの?
「…武瑠、学校にいる間は携帯ゲーム禁止。」
「なぬっ?!」
「テストで50位以内に入らなかったら。」
…常に3桁はまずいでしょ。
今後就職活動するのか進学するのかは知らないけど。
50位以内に入ってないとまずいでしょ。
「…うう…」
渋々携帯をカバンにしまう武瑠。
「3分集中すると頭が痛くなる…」
「全く。日頃から文字に目が慣れてないからだよ。」
僕はテストの範囲の課題をやりながら武瑠を見やる。
「武瑠ー、勉強しないとまた3桁だよ?」
「それはまずい。携帯ゲーム禁止はきつい。」
「だったら勉強!」
鈴、武瑠の扱い上手だな…
現実突きつけてからさせるのか。
…なるほど…