もしかしたら、そのまま入院かもしれないなあ…
「…うぅ…」
「鈴ちゃん、リラックスだよ。」
「してるよ…」
後部座席で顔を歪めながらお腹を押さえる鈴ちゃん。
病院に駆け込むとやっぱり入院で。
鈴ちゃんは横になる時も横になった後も痛みに顔を歪ませていた。
「…まだ感覚長いねえ…」
「今何分〜…?」
「…8分…」
「その前は…?」
「15分…」
…なかなか安定してこないなあ…
鈴ちゃんも腹痛が酷いのか半泣き状態だ。
「長いよお…お腹痛い…」
…俺、いても何もすることないしなあ…
入院セット取りに行くかあ…
「鈴ちゃん、俺一旦家帰るね?」
「…」
俺を見て恨めしそうに顔を膨らませる鈴ちゃん。
「鈴ちゃん、旦那さんいてもなんにもならないから…」
鈴ちゃんの先生が苦笑しながら入ってくる。
「…うぅ…」
威嚇するように俺を睨みつけてるけど、可愛いだけだから。
怖くないから。
俺は先生に鈴ちゃんを任せて一旦家に戻る。
洗濯物を取り込んで軽くご飯を食べて片付けて…
夕方にお風呂に入ってから入院セットをもって再び鈴ちゃんの所に。
病院に着いた頃には鈴ちゃんの陣痛の間隔は3分くらいになっていた。
分娩室に行った鈴ちゃん。
「…うぅ…武瑠〜…」
「どうしたの?」
「…来てよお…」
分娩台で俺に手を伸ばす鈴ちゃん。
涙目で本当に辛そうだ。
「…頑張れ…そばに居るから…」
…何も出来ない…
応援の言葉しか掛けられない。

「ー…磯ヶ谷さん!頑張って!」
「…くぅー…」
「赤ちゃんも頑張ってるから!」
「…頑張ってるもん…」
既に涙を流しながら力む鈴ちゃん。
俺の手を握っている手をかなり強く握っている。
「頭見えたよ!頑張って!」
「うぅ…」
「ほら、大きく息を吸って〜吐いて〜」
鈴ちゃんは泣きながら大きく息を吸ってゆっくり吐く。
「ほら、あと少し!」
「…うぅっ…」
鈴ちゃんが涙をポロポロし始めた時に赤ちゃんの泣き声。
「おぎゃああああああああ!!」
…う、まれた…
「鈴ちゃん、産まれたよ…」
「…う、まれた…?
…おわ、った…?」
鈴ちゃんは泣きながら俺を見つめる。
「赤ちゃんきたよ〜」
鈴の腕に赤ちゃんを乗せる助産師さん。
「……あ、…可愛い…」
「女の子だね…」
鈴ちゃんは赤ちゃんの頭を優しく撫でてまた泣く。
1度引っ込んでいた涙がまた溢れ出した。
今度は多分嬉し涙だ…
「…こんにちは…ママだよ…」
震えているのか、赤ちゃんの頭を撫でる手が少しカタカタしてる。