僕は鈴に何も出来なかったから。
後悔しかない。
でも、短い間だったけど、僕は幸せだったよ。
可愛くて優しい彼女。
僕の人生初めての彼女だ。
僕の初めての彼女が鈴で良かった。
本当にありがとう。
僕は最期にキミに一言だけ贈るよ。
『またね。』
これだったらいつか本当に会えるかもしれないだろう?
だから最期はさようなら、じゃなくてまたね、にしておくよ。
鈴、またね。
【卯月輝side END】

【佐倉鈴side】
…輝…
私は輝の遺体の前で手紙を握りしめて泣いた。
どれだけ泣いても。
輝は帰ってこない。
「…輝…」
私が、泣いてたらダメだね。
輝は私に笑って欲しくて心臓をくれたんだ。
…ほんと、輝は私に甘いんだから…
そんな所も大好き。
「…ありがとう、輝」
…今度会う時は、どんな姿だろう。
輝は生まれ変わって、どんな姿になっているんだろう…
次会うときは輝はもしかしたら子どもの姿かもしれないね。
「お母さん、お父さん…」
「「ん?」」
私はお父さん達に頭を下げる。
「輝のお葬式を挙げてください。」
…私を助けてくれた優しい輝。
輝に私が出来ることはやりたい。
…お葬式をあげるにもお母さん達に頼むしかない。
「…輝くんは、お母さん達も敬意を払うべき人だもの。
もちろん、挙げるわ。」
…お母さん…
「もちろんだ。鈴の命の恩人だからな。」
…お父さん…
「…本当に、ありがとう」
…輝…
私、前を向けるかな…?
輝がいない世界なんて考えたこともないけれど。
…輝が私に見せてくれた世界。
輝の絵の世界。
輝の世界。
…ずっと覚えていたい。
輝が私にくれた優しい世界。
私が前を向けるように輝は準備してくれていた。
私の写真は、笑顔や慌てている顔、びっくりした顔。
たくさんの表情がある。
…私、こんな顔もできたんだね…
輝がいてくれたからこそ、こういう顔も出来ていたの…
それなのに、輝が私の前からいなくなってしまった今、私は一体誰にこういう顔を見せたらいい…?
「…」
…輝の魂は、どこにあるんだろう…
案外輝が描いた絵の中にあるのかもしれないなあ…
「…ね、輝…」
輝が作ってくれた私の笑顔のキーホルダー。
満面の笑顔だ。
このキーホルダーの中にも、輝の魂が込められている。
…大切にするよ。
輝がくれたものは全て。
「…っ…」
前を、向いて生きよう。
今のままだと輝がいつまでも私を心配して成仏出来なくなっちゃうもんね。
だから、今だけ、泣かせてね。