中には手紙と写真と輝が作ってくれたキーホルダーと鍵が入っていた。
私は写真を見る。
…殆ど私だ…
作ってくれたキーホルダーは私が笑顔で手を伸ばしているのを輝目線で描いてある。
…鍵は多分、輝の家の鍵だろう。
震える手で私は手紙を開く。
輝らしい綺麗で丁寧な文字が顔を出す。
【佐倉鈴side END】

【卯月輝side】
鈴。
僕は鈴に救われたよ。
もう、描くことはないと思っていた絵も。
誰かを救いたいって思える気持ちも。
全部忘れていたことなんだ。
もう、僕が絵を描くことは無い。
最後は鈴に任せる。
僕が描いた2つの絵。
分かるよね。
僕の家にある絵と、美術室の絵だよ。
鈴が心臓病だって知ったのは僕がたまたま風邪薬を貰いに病院に行ったからだった。
あの時、僕は鈴に出会わなければまだ生きていたかもしれないし、鈴は死んでいたかもしれない。
…あの時、鈴が声を掛けてくれたから僕は生きていられたのかもしれない。
あのまま、磯ヶ谷くん達にいじめられていたまま、屋上から飛び降りていたかもしれない。
鈴があの時、友達になろうって声を掛けてくれたから、今の僕がいる。
最初は病院の患者の服を来て、点滴をつけたまま声を掛けてきたから『誰だこいつ』から始まったけれど。
思い返してみればキミは同じクラスだって気づいた。
あの時、なかなか返事をしない僕に鈴は不安を感じていたかもしれないね。ごめん。
鈴との約束、果たせずに消えることを許してね。
本当は僕も元気になった鈴ともう一度遊園地に行ったり、山でキャンプしたり、海遊びに行ったりしたかったんだ。
それは全部もう、出来ないことだけれど。
…僕は思いを果たせずに命を絶つ。
僕が死んだのは鈴のせいじゃない。
これだけは覚えておいて欲しい。
僕の死について、鈴が気に病むことはないから。
美術室に置いてある絵は好きなようにして。
あれは、僕の最後の作品だよ。
タイトルも鈴が自由に付けてくれて構わないから。
…約束を果たせずにごめんね。
また行くって言う約束も守れなかった。
そばに居るって言ったのに居られなくてごめん。
僕の一部しかそばにいられない。
僕は鈴に謝罪しかないよ。
こんな約束ひとつ守れない男のことなんて忘れてくれ。
僕からの最後のお願いだ。
僕のことは忘れて。
僕は生まれ変わってもまた鈴と出会いたいって思ってる。
…鈴も同じ気持ちでいてくれているから叶うかもしれないな。