…遺してくれたもの…
私に…
今は、輝きが強すぎて何も見えない。
でも暖かいものだということは分かる。
『…これは、何?』
『あなた(私)が生きるために必要なもの。』
…私が生きるため…
『これは、あなた(私)の未来への希望だよ。』
…未来への希望…
輝…
輝に会いたい。
今すぐ、現実で目覚めて輝の傍に行きたい。
…目が覚めたら傍にいてくれるって約束してくれたから…
私は安心して目を覚ますことが出来るんだよ…
…ねえ、輝…
『…そろそろ時間だよ。』
『…それ、どういう…』
輝が消えた時と同じ光…
現実に帰れるって事なのかな…?

「ー…ず、…鈴…?」
…あれ、苦しさ無くなってる…
手術、終わったの…?
「…おか、あさん…」
「鈴…」
……あれ?
…輝?
「…お母さん…輝は?」
息苦しさが無くなって、心臓も正常に動いてる。
「…」
…輝は、どこ?
「…輝くんは…」
…なんで、泣いてるの…
輝は、どこ?
「…輝くんは…もう、いないの…」
…モウイナイ?
…いない、って…
どういうことなの…?
「…それ、どういう…」
「…鈴の、心臓のドナーは…
…輝くんだよ。」
…え?
…嘘でしょ?
嘘、だよね?
…どうして…?
「輝くんから、預かり物があるの」
…あの、紙袋は…
前に、輝の家に行った時に、端の方に置かれていた…
「…ひ、かる…」
この心臓は、輝のなの?
「…私の、中にある心臓は…」
「…」
「…輝の、なの?」
…もしそうなら、輝は…
「…ない…」
「え?」
…輝が、いないのなら。
「こんな、心臓なくても、どれだけ苦しくてもいいから!
輝を返してよお…」
健康な体もなくていいから。
苦しいままでいいから。
そばにいて欲しい人を…返してよお…
「…やだ…あっ…」
「…鈴…」
「…輝…」
健康な体も、普通の心臓も。
なんにも要らない。
だから…
輝の傍に行きたいよお…
「…輝、どこにいるの?」
「卯月くんなら、霊安室にいるよ。」
…死んだ人が、行くところ。
「…あいたい…」
輝に…会いたい…

「ー…輝…」
…安らかな寝顔で。
ただ普通に寝ているだけのように見える。
その目はもう、開くことは無いのに。
今にも開いて『おはよう』って言いそうな顔なのに。
何を思っても。
何を言っても。
輝が目覚めることは無い。
「…輝…」
自分の命を投げ出して私を救ってくれた輝。
私はお母さんから輝からの預かりものを貰う。