あとは鈴の両親に渡す鈴へのプレゼント。
クラゲのペンダントもこの中に入れて置いた。
「…これで、いいの?」
「…うん。ありがとう母さん。」
僕は荷物を持って母さんと並んでアパートを出る。
…16年お世話になったこのアパートともお別れだ。
母さんは父さんの遺影と遺骨を車に乗せて病院に向かう。
母さんの助手席。
死ぬ前に乗れてよかった。
病院について、僕は鈴の元に向かう。
鈴の両親に渡すものを渡して僕は鈴の所に。
母さんは鈴の両親と話している。
…何を話しているのか分からないけど鈴の母親は号泣してしまった。
「…ひか、る…」
「手術だね。」
「うん。」
「…手術終わったら幸せが沢山あるからね。」
鈴は少し微笑んで僕の手を握る。
その手は冷たくて、心臓が今にも止まりそうなのが分かる。
「…手術、頑張るよ…」
「うん。
…鈴…強く、生きるんだよ。」
手術室に運ばれていく鈴は僕を見て少し驚く。
「…さよなら、鈴。」
僕の分まで、ちゃんと強く生きるんだよ。
僕がいなくなっても、鈴は前を向いて歩けるんだから。
…約束ひとつ守れない男のことなんて忘れてもいいから。
僕は手術を受ける準備をする。
母さんの前に立つ。
「…母さん…さよなら。」
母さんは涙を堪えているのか、唇が震えている。
「…鈴との約束ひとつ守れなくてすみません。
…短い間でしたが…ありがとうございました。」
鈴の両親は僕を抱きしめてくれた。
「…卯月くんがいたから…あの子は生きてこれた。
…お礼を言うのはこちらの方だ…
本当にありがとう…輝くん…」
…鈴の父親の言葉で僕は涙を流してしまった。
「…母さん」
「どうしたの?」
「…僕の形見だと思ってよ、メガネだけど。」
母さんは唇を噛んで僕からメガネを受け取る。
…本当はメガネなんてなくても見える。
近視だっただけだ。
「…輝、生まれてきてくれて…
母さんの子になってくれて…本当にありがとう…」
「…産んでくれて、ありがとう…」
…もう、お別れだ。
手術室に入った僕は手術台に横になる。
隣の手術台には酸素マスクを付けられて青い顔の鈴。
…もうすぐ、助かるから、待っててね。鈴。
「麻酔打ちます。」
全身の力が抜けていくのを感じながら僕は鈴を見て微笑んだ。
「…鈴、愛してる…」
【卯月輝side END】

【佐倉鈴side】
…とても長い、夢を見た。
またあの時とおなじ、くらい空間。
…怖くて、寒くて、寂しくて…
ずっと叫んでいた。