…これは夢なんじゃないか、と疑ってしまう。
『ほら、鈴。
前に乗れなかったジェットコースター乗ろう。』
『うん!』
私は輝と手を繋ぎながら駆け出す。
私の隣を並んで走る輝はかっこよくて…
楽しそうに笑っていた。
『…きゃあ〜!高い…』
『どう?』
…輝と一緒ならどこでも楽しい。
『…楽しい?』
『うん!』
…良かった。
輝がいてくれて。
輝が居ないとこんなに幸せな気分にはなれなかったよね。
『鈴、大好き。』
『輝?』
『ほら、戻ろう。』
輝が私の手を引いて暗闇の方に歩いていく。
…怖い。
『なんで…』
『鈴は僕と一緒にいたくないの?
僕はずっと待ってるよ。』
…そうか、これは夢なんだ…

「ー…ず、鈴!」
「…ヒュー…ヒュー…」
…あれ、苦しい…
「鈴ちゃん!頑張れ!」
「……ヒュッ…」
「鈴!頑張って…」
…お母さん…?
…なんで、泣いて…
ーバン!
「…っ鈴!!」
…輝だ…
「頑張れ、鈴!!」
輝は私に手を伸ばして目から涙が溢れていた。
…輝のこの顔、綺麗だなあ…
「…ひ、かる…」
私も、輝に手を伸ばす…
けど届かない。
「…ヒュッ…ゲホッ…」
酸素マスクを付けながら私は吐血してしまった。
…もう、死んじゃうのかな…
今、気を抜いたらまたあの暗闇に落ちていってしまいそうだ。
「…ひか、る…お願い…」
「なんだ?!」
「…て、にぎって…」
輝がそばにいてくれるのが分かったら、きっと大丈夫だから。
私は輝がいてくれるだけで頑張れるから。
…あの夢の続き、ちゃんと現実にしたいから…
頑張れる…
私の生きる糧…
「……ヒュッ…」
「鈴!」
「…こわ、い…」
…死にたくない…
「…こんな、心臓、いらな、い…もう、いらな、いから…早くかえて…」
…17年…
17年付き合ってきたんだ…
もう、苦しいこんな心臓要らない。
「…そうだね。
じゃあ鈴、手術しよっか。」
「…た、すけて…
早く、…苦しみから…にげた、い…」
輝は私を見て柔らかく微笑む。
「…分かった。
だったら準備もあると思うし、僕は帰るよ。
手術まで、我慢してね。」
…待って、行かないで、輝…
私をひとりにしないで…
「卯月くん、待って…」
お母さんが輝を追いかける。
…お願い、輝…
手術の時もそばにいて…
そしたらきっと、悪い夢は見ないから…
【佐倉鈴side END】