「な、なんの音だ?」
「何?」
思わず耳を塞いだ。耳から手を離しても、まだ室内で反響している。それが、音の凄まじさを物語っていた。
カルフがいなくなったこの場所では、ふたりの行動は制限される。見た事のない機械だらけで、どうしていいかわからないからだ。
「テミロ、これをカルフが押した時、窓が開いた事があった気が・・・。」
ロドは、ここに来たばかりだから、自分の言葉に確証は持てなかった。
「本当か?ここを押したのか?」
テミロも、ロドの知識と大差なかった。なぜなら、未知の道具を触る事をひどく怖がったからだ。それでも、目を思い切り閉じて、勢いをつけて押した。
目を閉じていても、太陽のまぶしさを感じる事が出来た。
「パク、パクよ。」
ロドの声に、目を開いた。目の前にあったはずの白い壁に、丸く穴が開いている。そこから、外の様子が確認できた。
「パク・・・。」
息子の姿を肉眼で見るのは、本当に久しぶりだった。テミロはその事に戸惑い、それ以上、何かを言う事が出来なかった。そんなテミロとは対照的に、ロドは壁を叩いてパクの名を叫んだ。
「パク、パク、パクぅ。」
声が聞こえないのか、パクは少しも動かない。不安になった。
「ねぇ、テミロ。外に出る方法はないの?」
「外に出る?本気か?」
外の景色を見る限り、時間の流れは止まっているように見える。しかし、長年の生活から、鎖なしで外に出る事を体が拒んでいた。
「だって、パクがそこにいるのよ。助けに行かなくちゃ。」
「しかし・・・。」
「もう、いいわ。」