「テミロ、これって・・・?」
「わからない。ただ、ここにいるカルフは、僕らと同じ人間ではないという事だ。」
ふたりの村に、テレビや映画なんてものは存在しない。だから、今見ているカルフが、立体映像である事がわかる訳はなかった。ただ、透けていくカルフが、自分達とは異なるもの、それだけしかわからなかった。
この世界で起きている不可思議な事象。それも全てここから生まれていた。
それをカルフは謝りたかった。これからふたりの前に訪れる悲劇。その事も謝りたかった。でも、それは叶う事はなかった。もう、体のほとんどの部分は消えていた。音声も出す事は出来ない。
“すまない。そして、さようなら。”
消えかかった唇は、そう告げていた。