カルフの顔に、ノイズが走った。それは、本当に奇妙な光景だった。
「カルフ、いったいその顔はどうしたんです?」
そう聞いているそばから、今度は左腕にノイズが走った。あきらかに、普通の人間ではあり得ない現象だ。カルフは自分の左腕を見つめ、哀しそうな声で答えた。
「あぁ、そろそろ時間かもしれないな。もうすぐ、お前さん達の子供、パクがここにやって来るはずだ。」
「本当ですか?」
ふたりには、どんな事よりもうれしい事だ。その表情を見て、カルフはさらに哀しい表情になった。しかし、パクの事で喜んでいるふたりは、その事に気がつかなかった。
「あぁ、本当だ。その時は時間の流れが完全に収まっているはずだ。これからは、平和に暮らせるぞ。」
「良かった。本当に良かった。」
しかし、喜んでばかりはいられなかった。
「お前さん達に謝らなければいけない事があるんだ。パクが、パクが時間を止めるには、とても大きな代償が必要なんだ。その大きな代償を使って、鎌から放たれたエネルギーが時間の流れを相殺していく。」
「その代償とは?」
顔つきが変わった。
「その、その・・・だ、だ、代償・・・。」
言葉が繰り返している。壊れた映像を見ているようだ。
「カルフ?」
さらに、ノイズが酷くなっている。顔や腕、脚にもノイズが現れている。よく見ていないとカルフかどうか、わからなくなってきた。
「おも・・・、おも・・・、・・・で・・・。」
「何です?カルフ、何を言ってるんです?」
もう、そこにいる事は限界に達していた。ゆっくりと、色が薄まっていく。カルフの向こう側には、白い壁が透けて見えている。