話を変えるしかない。ヤンダルはそう思い、テミロから聞いた話を思い出していた。
―――こ、これだ。
「本当にすまなかった、パク。お願いだから、少しだけ話を聞いてくれないか?ミルルも、なっ?」
いつものヤンダルからは、想像の出来ないやさしい声色だ。気味悪くさえ感じた。ふたりは、それに従った。
ふたりの勢いが止まったのを確認すると、ヤンダルは再び口を開いた。
「テミロは、お前の父さんは、こう言ってた。今、それを思い出したから、聞いてくれ。」
これから発する内容を吟味した。よく吟味した上で、確実に、わかりやすく伝えるのを心がけよう、そんな風に思った。
「まず、お前のお母さんは死んでいない。」
「なんで、そんな事言えるのさ。時間の流れにさらわれて助かった、そんな話なんて話聞いた事ないよ。それにさっきから、父さんが話したとか言ってるけど、どうやって話したのさ。もう、何年も前にさらわれて、いなくなった父さんがどうして・・・。」
そこで息が切れ言葉が止んだ。
言われてみれば、もっともな話だった。それでも、テミロの言葉には、ヤンダルを信じさせる何かがあった。もしかしたら、本当に幽霊の声かもしれない。この世にテミロは、もういないかもしれない。それでも、やはり信じなければいけない、そう感じていた。
ヤンダルは感じたままの事を、パクに真剣な口調で伝えた。包み隠さず、思ったままを伝えた。
「わかった。」
パクの中では、消化しきれていない。それがよくわかる一言だった。