鎖

一番はじめにさらわれたのは、ウィルだった。
「なぁ、ウィル。」
コーヒーカップを片手に持ちながら、ウィルの研究室の扉を開けた。ほんの少し開けただけだった。なのに、一瞬でコーヒーカップは、どこかにさらわれた。
「な、なんだ？」
慌てて扉を閉める。しかし、扉はすごい振動でなかなか閉まらない。取っ手を両手で持ち、ありったけの力を込めた。
「し、閉まれぇ。」
研究ばかりしていたせいで、カルフの体はなまっていた。
―――ちくしょう。少しくらいは、体鍛えておくんだった。
後悔しても始まらない。今持てる全ての力を注いだ。すると、少しずつだが、扉が閉まりはじめた。
―――いいぞ、いいぞ。
腕がつりそうだ。それでも、気にしている余裕はない。カルフは力を込め続けた。
鍵を閉めた。すると、安堵感からカルフはその場に倒れ込んだ。扉はカルフをさらおうと、激しく振動していた。