「本当に?うれしいな。」
ロドも、無邪気に笑った。それを見て、ヤンダルはますますうれしくなった。
「そっか、そっか。で、何が欲しい?」
「あ、そうだったね。包丁を買いに来たんだよ。今、手に持っているようなやつ。」
時間が経ち、温度が下がった包丁は、黒鉄色に色が変わっていた。
「あ、これか?これは、失敗作だ。表に親父の造ったいいやつが、たくさん並んでいるから好きなの選びな。」
ヤンダルの言葉を無視して、ロドは無理を言い始めた。
「その、その手に持っている包丁がいいな。」
「だから、これは失敗作なんだって・・・。」
「でも、それがいいんだもん。」
若い頃のロドは、少し小悪魔的なところがあった。そして、そんな小悪魔的なところが、多くの男を惹きつけていた。ヤンダルも、彼女の罠にはまっていった。
「しょうがねえなぁ。じゃ、時間かかるから、家に帰ってろよ。あとで、届けてやるから。」
「いいよ。ここで、待ってる。黙って見てれば、何も文句ないでしょ?」
「た、確かに文句はないけどさぁ。や、やりづれえなぁ。」
そう言いながらも、ヤンダルはうれしそうだった。