「・・・ふぅ・・・」


コ「・・・想像以上に疲れるとこだね、ここ。」



風呂上がりで火照った身体を冷ますために、少しだけ障子を開けるとひんやりとした風が頬をゆるりと撫ぜた。



「髪、ちゃんと乾かせよ」


コ「めんどくさー・・・」



・・・たしかに、コウが疲れるのも頷ける。
部屋を案内するはずが、何故か屯所を一周走り回ったり、飯の時におかずの取り合いになったり、悪戯を仕掛けた沖・・・、総司をしばいたり。



「・・・こんなに賑やかな一日、・・・初めて。」


コ「それなー・・・」


「・・・いい人たちだな・・・。」


コ「・・・、れーちゃん。」


「なんだ」


コウの方を見ずに問いかけに応じる。


コ「元の世界に、戻りたい?」


「当たり前だ。」



きっぱりと答える。



「・・・戻りたいに決まっている。何の為にこんな仕事(殺し屋)をしていると思ってるんだ。」


コ「・・・でも、ここなら・・・ここでなら、」


「忘れられる、とでも言いたいのか?無理だ。」


コ「・・・でも、***はもうあんまり長くないだろ?」


「だから最後に私がトドメを刺す。・・・何人も殺ってきたんだ。どうせ地獄に堕ちるなら、あとひとつの命くらい・・・。」


コウ 「・・・」


「・・・じゃないと・・っ・・・」



これ以上喋ると余計な事まで口走ってしまう。
小さく息を吐いて、下唇を強く噛んだ。



コ「・・・今日は寝よっか。俺本当に疲れたんだよねー」


「・・・あぁ。」



二組の布団を並べて敷き、頭から潜り込む。
勿論、愛刀も一緒に。
鞘を緩く握ると、いつもなら落ち着くのに今日は無理だった。



「・・・はぁ」



いつまで経っても、睡魔はやって来ない。
何度か寝返りを打っていると、右手に暖かい何かが触れた。・・・コウの手だ。
隣を見ると、反対を向いていて顔が見えない。
が、多分起きているだろう。

・・・ありがとう。
そう心の中で呟いた。