「おい、紗綾?お前俺の話聞いてんの?」
「ん〜??聞いとるよ」

朝のバス…私、紗綾は、彼氏の千紘の強い希望で朝一緒に登校することになった。

私のルーティーンである裕太(アニメキャラ)を朝のバスで精一杯堪能するという時間をやめてまで。

だがしかしやっぱり裕太を堪能したいということでロック画面を裕太にしてずっと向き合い続ける今日この頃………


あぁ、裕太ぁぁああ今日も可愛いねぇ♡


「ああ!!ちょっと!千紘!!」
ひょいと私のスマホを呆気なく千紘に盗られてしまった。
千紘は、何か言いたげだ。

「せっかく画像だけで我慢してたのにぃ。」
「紗綾さん??君の彼氏は、だれ?」

ありゃ怒ってる??

「そりゃあもちろん千紘君だよ??」

3次元は、ね。
あくまでも3次元は…。

「うん。じゃあ、わかった。
この画像を変えようか!
好きな男のことは、いつまでもみていたい
もんね」

えっ!!なんでぇ!?
私の裕太ぁぁぁぁあああ!!

ふぅ…と千紘は、頭を横に振りながらため息をつく。
頭が痛いとでも言いたげだ。

「………………紗綾。この画像…裕太?だっけ?こいつは、紗綾の何かな??」

裕太を疑問形で聞いてきたのにこの人こいつ呼ばわりしたよ!?

あぁ、実は、そんなことどうでも良かったりする??
えっと…なんて答えるべきかな?
私の推し??いや、好きなアニメの登場人物??

「質問に答えようか….紗綾??」




「……………………………彼氏……です。」
言ったよ………私。

言っちゃったよ………私。

言ってしもうたよ……私ぃぃぃいい!


あぁ、もう完璧怒ってるよ。
手首を掴まれちゃったよ。

絶対、次は彼氏っていうなよ!?オーラが凄い…。


「俺は?」

「…彼氏」

「コイツは??」

「………………………か、彼氏。」

「彼氏は、1人なんじゃない??」

千紘君、笑っちゃってるよ。
でも、目が洒落にならない…。

質問のたびに心做しか強く掴まれている気がする…。

「俺は?」

「彼氏…です。」

「コイツは??」

どうする?

どうすれば??

「…………………嫁。」


彼氏でもない。

ましてや、夫でもない。


まさかの私の口から出た言葉は、


嫁。




オタクは、罪深いね(白目)



怖い、怖いよ。お母さん。

怖くて怖くて彼氏の目が見れません。

あぁ、怒ってるんだろうな。


私は、顔を千紘からそらした。

さすがに反省……するべき?


悶々していると千紘に強く掴まれていた手首の力が弱々しくなっていく。


慌てて、顔を上げると千紘は、私と反対方向の窓を見ていた。

窓に写っている千紘は、前髪のせいで表情までは、わからなかったけど、なぜかすごく…


「…………もしかして、落ち込んでる?」

千紘の背中に声を掛ける。


「……違うし…。」


さっきとは、打って変わって弱々しいく、なんだか凄く……かわいい。

「じゃあ、拗ねてるんだ?」

「…違う…ただ…」

「ただ??」



「……好きなものや人は、いっぱいいてもいいけど、
一番好きなのは、俺で……いてほしい…かも」


胸がキュッとなる。
ふわふわとまるで酔ったかのよう。


本当に…

「可愛いなぁ…千紘は」

そういうと私は、自分から千紘と恋人繋ぎをした。

千紘の手は、温かくて…


「可愛いより……カッコイイの方がいい。





でも今は、それで充分かも…」

窓に写った千紘は、顔を真っ赤にしていて

窓越して千紘と目が合ってしまった。

すぐさま千紘は、目を逸らしてしまった。

「千紘、こっち向いてよ。」

「……む、無理。今は、ちょっと。てか、
紗綾、なんで無理なのかわかってるのに。
…いじわる。」


「ん〜?なんでだろ??
まぁ、いいよ。」

心地の良いバスの揺れ、うとうとと私を睡眠に誘う。


私は、千紘にもたれかかり温もりを感じながら寝てしまった。




次の起きた時は、千紘に起こされてぼーといながらバスを降りた。

「千紘〜そう言えばいい加減、私のスマホ返して。」

「あぁ、そう言えば…そうだったね。
はい、どーぞ♪」

なんか、凄く上機嫌だな……。

まさか…

慌ててロック画面をみてみると
そこには、寝ている私の隣でピースをしている千紘が写っていた。

変えられた………。


私の裕太…………。


「ほら、早く学校いこ。」

まぁ、いいや。

私のスマホには、パスワードがついてて(ちなみに指紋じゃなくて番号の方)その暗証番号は、裕太の誕生日。

よく覚えてたな~………


なるほど!!


裕太に嫉妬してるのかと思ってたけど私に嫉妬していたのか…。