訳あり無表情少女と一途な幼馴染

「…」

ふと疑問に思う事がある
会いたいと思うのは紫音しか思い浮かばないけど
あの時、手を差し伸べてくれた人
その人がどうしても思い出せない

紫音は今年久八高に入り、中学から入ってる白狐の幹部になった
情報は久八高の理事長であり、幼馴染の和士から
高校での写真を頼んだら

『紫音だけでいいのか?』

って聞かれた

『紫音以外にいないでしょ』

そう返したら
辛い、悲しい表情で

『…分かった、紫音の写真な』

何か言いたそうだったけど、結局何も言わなかった
高校生になった紫音の写真を見て、思った
私は母親似で紫音は父親似だ
見た目で姉弟だと分かる人はいないだろう
誘拐目的は、私のある秘密を利用する為だった
いつ見つかるか分からない状況で、神崎 栞として動く訳にはいかない
だから高校では紫音に…周囲に気づかせない

本当は姉として会いたいけど
紫音は今、苗字を変えて親戚と一緒に暮らしてる
身内と知られれば、今の生活を失うかもしれない
だから、誰にも《神崎栞》だと知られてはいけない

「紫音…」

ただ、想うだけ…
コンッコンッ

「栞? 大丈夫か?」
「…大丈夫」

仕上げにカラコンして寝室を出る
リビングに戻ると男装した私を見て、和士がうんと頷く

「行くか」
「ん」

私は、人生を変える一歩を踏み出した