紅葉色の恋に射抜かれて

「――楓、好きだ」


今まで苗字だったのに、不意打ちで名前を呼ばれた。

唐突の告白と相まって、私はドキドキしながら葉山先輩を見つめる。


「わ、私も……っ」


気持ちばかりが先行して言葉を詰まらせる私に、葉山先輩は小さく笑った。


「ゆっくりで構わない。楓の気持ちも聞かせてくれ」


その穏やかな声音に気持ちが落ち着いた私は、ふうっと息を吐いてから伝える。


「――好きです、弓月先輩」


ずっと、弓月先輩の射形に一目惚れしてたんだと思ってた。

でもきっと……中学三年生のとき、赤く染まった紅葉の嵐の中で弓を引く弓月先輩に、私は恋をしていたんだと思う。

そう考えると、この学園に高校見学に来たことも、弓道部が休みなのに弓月先輩が自主練習していたことも、私と先輩が恋に落ちたことも、すべてが運命だったように思える。