紅葉色の恋に射抜かれて

「迷いを捨てれば、あたるから。絶対にあてて、俺にこの想いを伝える機会をくれ」


待って、それって……葉山先輩も私と同じ気持ちだってうぬぼれてもいいの?


そう聞きたい衝動に駆られたけれど、私は喉まで出かかった疑問を飲み込む。

どのみち、私があてればすべてわかることだから、黙ったまま射場に立った。


「ふう」


深呼吸をして、気持ちを整える。

これは、私自身との闘い。

絶対に外せない矢があるとき、自分の弱さに勝てるかどうか、きちんと向き合いたい。

その一心で私は弓を構えると、狙いを定めて引き絞る。

今まで、こんなに強い気持ちで、迷いもなく的がはっきり見えたことがあったかな。

ううん、きっとない。


いつもは不安で揺れていた狙いが、ぴったりと合う。


私は、私自身に勝てたんだ。


そうはっきりわかった瞬間、弦を離す。

矢は迷いなく的へ吸い込まれていき、パンッと軽快な音を響かせた。

それにほっとしながら振り返ると、葉山先輩の温かい眼差しがそこにある。