紅葉色の恋に射抜かれて

「弓道具を雑に扱うな」  


その聞き覚えのある声と、目の前にあるこれまで何度も私を庇ってくれた大きな背中に、またポロッと涙がこぼれる。


「葉山、先輩……っ」


なんで、私に怒ってたんじゃなかったの?  

幻滅してるんじゃなったの?


そんな疑問が頭にわくけれど、すぐにはっとする。

葉山先輩は嫌いな人だろうと、理不尽な目に遭っていれば、迷わず手を差し伸べられる人だ。


逆にどんなに大切な人だろうと、間違った道を進もうとしていれば叱ってくれる人でもある。


「妬む前に、お前たちは六実以上の努力をしたのか?」


突然現れた葉山先輩に、同級生の女子部員たちは押し黙る。

そんな彼女たちの顔を順々に見つめながら、葉山先輩は静かに語りだした。


「部活が休みの日も、部活のあとも、六実は毎日遅くまで弓道場に残って誰よりも弓道に向き合ってる。何本も何本も弓を引いたからこそ、六実は一年生で大会に出られる実力をつけることができたんだ」


そう言って葉山先輩は私を振り返ると、口元にわずかに笑みをたたえる。