紅葉色の恋に射抜かれて

「六実のその言葉は忘れる。だからくれぐれも大会出場への切符を一生懸命、勝ち取ろうとしていた他の仲間の前で同じことを口にするな」


冷ややかに言い残した葉山先輩が、私に背中を向けて弓道場に戻っていく。

そのどこか突き放したような言い方に足が竦んで、私はあとを追いかけることができなかった。


……失望された?


サーッと血の気が失せるような感覚に襲われる。


「違う……違うんです。今のは本心じゃない。ただ、愚痴をこぼしちゃっただけで ……本当は大会に出れて、うれしかったし……っ」


語尾は胸が詰まってしぼみ、声は涙に濡れて震えた。

私は目からポロポロとこぼれる雫を手の甲で拭う。  


「同級生の子と仲良くなれないのを弓道のせいにして、私……バカだ。射場に立つまでにどれだけ努力しなきゃいけなかったか、自分がいちばんわかってるはずなのに、基礎練習してればよかったなんて……本当に、バカ」


今さら自分の過ちに気づいても、きっと葉山先輩は私のことなんてもう嫌いになっちゃったはず。


「本当、私のバカ……」


そんな私の呟きは、星も雲に霞んだ灰色の空に人知れず消えていった。




取り返しのつかない言葉を口にしてしまったあの日から、数日が経った。

空気が湿気を帯び始め、六月になった今日も私は弓を引いている。

あれから、葉山先輩は委員会の仕事で忙しくなったらしく、弓道部が休みの日、必ず来ていた自主練に現れなくなった。

弓道をする覚悟もない私なんかと同じ空気を吸いたくないから、来なくなったん じゃないか。

そんなふうに悪い方向にばかり考えてしまう自分が嫌になる。


「……はあ」


ため息をつきながら、私は外の空気を吸いに弓道場の外に出た。

すると、タオルで土のついた矢先を拭いている同級生の女子部員たちがいる。