紅葉色の恋に射抜かれて

「六実は中学から、今、お前たちがしている筋トレもゴム弓もやってきたんだ。下積みをすでに乗り越えてきている。それを同級生なのに、と妬んでいるうちは、いつまでたっても射場に立てないぞ」


葉山先輩の一喝に同級生の部員たちは押し黙る。

それから「すみませんでした」と 口先だけで謝ると、キッと私を睨みつけてその場から去っていた。

けれど、彼女たちがいなくなったあとも私の心は晴れない。


「この部活に入ってから、同級生のみんなとうまくいってないんです……。ああやって、よく……その、いろいろと言われたりして」


私の話に相づちをすることなく、葉山先輩はじっと耳を傾けてくれていた。

それに甘えて、私は抱えきれなかった黒い感情を吐露してしまう。


「今は先輩たちがいるから、寂しくないですけど……。葉山先輩たちが卒業したら、私……この部活でやっていける自信がない」


ぎゅっと弓を握りしめて唇を噛み、つい口からこぼれたのは……。


「こんな思いをするくらいなら、みんなと基礎練習をしていたほうがよかったのかも。 出場できなかった先輩にも申し訳ないし、大会なんて出ないほうが……」


そのあとの言葉は葉山先輩の「それ以上は聞きたくない」という低い声に遮られる。

私が弾かれるように顔を上げると、葉山先輩のまとう空気が張り詰めた気がした。

「大会に出られる人数は決まってるんだ。だから俺たちは、出られなかったやつの努力した時間、思いも背負ってるんだよ」


決して声を荒げることなく、ただ淡々と葉山先輩は告げる。