紅葉色の恋に射抜かれて

的中が安定するようになってきて、一週間が経った。

今日も大会形式の練習をしていた私は、後ろからポンッと肩を叩かれて振り向く。

すると、同じチームの先輩が私に向かって拝むように手を合わせていた。


「六実。私があてられなかったぶん、挽回してくれてありがと」

「あ……いえ、そんな。私がダメダメなときは先輩方が助けてくれるので、こちらこそいつも支えてくださってありがとうございます」


ぺこりと頭を下げれば、他の同じチームの先輩に肩を組まれる。


「頑張ったじゃん、六実。今じゃうちのチームのエースだよ」


ぎこちなかった先輩との仲も改善していって、私は少しずつチームの一員として馴染めるようになっていた。

それもこれも葉山先輩が私の練習に付き合ってくれて、精神的にも支えてくれたからだ。


私は後輩に指導している葉山先輩をこっそりと窺い見る。

すると、向こうも私の視線に気づいて、目が合ってしまった。


「あ……」


時間が止まったみたいな、そんな錯覚を覚える。

少しの間見つめ合っていると、葉山先輩はふっと私に微笑んだ。

その瞬間、息が詰まって胸が苦しくなる。

この身体の異変は、あきらかに――『恋』。

それ以外のなにものでもない、と私は自覚していた。

あの雨の日の自主練習のとき以来、葉山先輩とはあまり話せていない。

というのも、変に意識してしまって、話題が頭から吹っ飛んでしまうのだ。

それを寂しく思いつつ、今日の練習もほとんど話せないまま、空は茜色に染まっていく。

練習も終わりに近 づいて、私は基本を見直すという名目で弓道場の裏手にある『巻藁』――弓道の型の稽古に使う藁に向かって弓を引いていた。

本当のことを言えば、ただ単に弓道場にいると葉山先輩のことが気にかかって集中できないから、外に出てきただけだったりする。